太陽活動の基礎知識


1、太陽から放射されるプラズマ流と地球磁気圏

太陽放射エネルギーの源は,太陽中心核で起こる核融合反応です。太陽から外向きに流れ出しているコロナガス(主としてプラズマ)は太陽風と呼ばれます。

太陽コロナの広い範囲に分布している太陽双極子磁場が太陽風によって運び出され、地球との間で、惑星間磁場(Interplanetary Magnetic Field,IMF)を形成します。以後、太陽風磁場と呼ぶ。

太陽風や太陽風磁場が変動すると,『吹流しの姿をした地球磁気圏』は影響を受け,地球磁気圏内で様々な変動が発生します。地球磁気圏の変動は,いろいろな形で地球表面へと伝えられてきます。

地球表面で観測される最も 顕著な例が『オーロラ』であり,『磁気嵐』なのです。『太陽風』や『惑星間磁場』を変動させる源は太陽ですから,『オーロラ』や『磁気嵐』の源は太陽にあると考えてよい

プラズマとは:物質を構成する原子は原子核(プラス)と電子(マイナス)で出来ている。高温・低圧などの環境では、電子と原子核が分離した状態になる。これをプラズマと呼ぶ。プラズマはそれぞれの粒子が電荷を持ちながら全体としては中性を保つ。

2、回帰性磁気嵐・オーロラとコロナ・ホールからの強い太陽風

地球スケールの地磁気擾乱指数(Kp-index)は27日周期があり、Kp-indexは強弱を数回繰り返すが、それは周期的なので回帰性磁気嵐と呼ぶ。太陽自転周期と等しい。

回帰性磁気嵐の原因はコロナホールからの強い太陽風である。コロナホールとは太陽磁場が外側に開いている場所である。コロナホール由来であるため強い磁力線を伴うのが特徴である。

太陽は27日で一周するため、27日後には同じ影響が現れる。27日の太陽周期に合わせたデータプロット図を使用することによって、磁気嵐の予測をすることができる。


3、太陽面の爆発現象とオーロラ嵐・磁気圏嵐

太陽面の爆発現象をフレアと呼ぶ。フレアは黒点の活動が活発化したときに起こる。爆発時にコロナガスが太陽から勢いよく放出される。

CME(コロナ質量放出)と呼ばれている現象で,2〜3日後に地球磁気圏に衝突し,激しい磁気嵐やオーロラを発生させる。CMEはコロナホール由来の高速風と異なり、磁気嵐はガスによる衝突によって発生する。フレアによって,強いγ線,X線,紫外線などが放出され,電波バーストと呼ばれている。広い波長域に渡っての電磁波放射も観測される。

太陽フレア活動はACE衛星によって観測され、弱い順からA、B、C、M、Xとクラス分けされ、Xは大規模フレアと呼ばれる。


4、地磁気攪乱

(1)太陽風磁場の測定方法

太陽風磁場は立体的ですから、磁場をあらわすためにGSE座標系が用いられています。x軸は太陽方向、z軸は黄道面に垂直北向きに、y軸は右手系をなすようにとります。なお、地球が太陽を公転する面を黄道面といいます。
磁場の3成分をBx、By、Bzで立体的に示します。Bzを磁場の南北成分ともいいます。磁場rの黄道面内の角度phiはphi=tan-1( By/Bx )で求められます。黄道面からの仰角thetaはtheta=tan-1( Bz/(Bx2+By2)1/2 )で求められます。それぞれ磁場のphi成分、theta成分といいます。

南北磁場Bzが南向きになっている時は、太陽風のエネルギーが地球の大気圏に突入するドアが開いていると覚えておいてください。

(2)地磁気攪乱の要因

太陽風磁場の南北成分(Bz)が大きく南向きを示す時、太陽風が高速の時、に地磁気擾乱が発生しやすい。

(3)地磁気擾乱の原因となる現象

27日回帰性(太陽の自転周期)を持つものとしては、上記2で説明したコロナホール由来の回帰性磁気嵐。

突発的なものとしては、上記3で説明したCME由来の磁気嵐。太陽風磁場の南向きが大きくなることがある。その場合、地磁気嵐が起きうる。

(4)太陽活動の11年周期
●極大期の特徴
CMEが頻発、したがって突発的な地磁気擾乱が多い。回帰的な性質が見えにくい。

●下降期の特徴
コロナホールによる高速太陽風の特徴が卓越。したがって回帰的な地磁気擾乱が多い。回帰的な性質が見えやすい。


(5)太陽風磁場のセクター構造

towardセクターとは、太陽風磁場のBx(太陽向き成分)が正、By(地球の公転と反対向き成分)が負となっているセクター。Awayはその逆。春にはtowardセクターで地磁気活動が比較的活発になる傾向があり、秋にはawayセクターで地磁気活動が比較的活発になる傾向がある。

太陽の自転活動の27日周期にあわせて、太陽風磁場のセクター構造はリアルタイムで見ることができる。


(6)地磁気活動チヤート

地磁気活動の27日にわたる変化を見るチヤートです。1日の最大のK指数を色で表現、K指数の1日分の合計を高さで表現。(気象庁柿岡地磁気観測所のK指数を使用)。

なお、K指数とは、静穏日の地磁気日変化に対する地磁気変化の偏差を0-9の指数で対数的に指数化たもので、3時間毎に算出されている。数字が大きいほど、大きな地磁気じょう乱があったことを示している